
コンピュータを動かすために必要なオペレーティングシステム(OS)の中で、最も古い歴史を持つUnixを参考にして作られたLinuxは、世界中のあらゆる場所で利用されています。
パソコンやスマートフォンだけでなく、メールサーバー・温度調節装置・テレビ・ドローン・自動運転車など、もはや人間の生活に必要不可欠なほどに大きな広がりを見せています。
どうして、これほどまでにLinuxが市場を独占しているのでしょうか。その理由は、ほぼ全てのバージョンを無料でダウンロード出来る上に、オープンソースなので誰もが思い通りに改変出来て、商用利用も可能だからです。
元々、Unixは企業が開発したものなので知的財産権が存在し、ユーザーは開発した企業にお金を払う必要があります。しかし、Linuxはある個人がUnixに似せて作ったOSで、その作者自身も世界中の人々と共有することを目的に無料で提供し始めたため、今では多くのユーザーの手に渡り、様々な用途に合わせて利用され続けています。
また、大きく広がった別の理由として、1990年代から始まったインターネットの普及があり、これが多くの開発者を生み出しました。その上、同時代のライバルとなり得た無料OSの開発会社がいくつか存在したのですが、これらが権利を巡る法的闘争にあけくれて停滞していたことも追い風となっていたのです。その後、Linuxは世界中の大企業のウェブサーバーなどの法人向けとして使われ続けていましたが、家庭用パソコンなどの個人向け需要は伸び悩んでいました。ところが、世界中のスマートフォン市場を席巻することになるOSが登場する2008年になると、オープンソースを操る個人ユーザーたちに受け入れられるようになります。
そして、スマートフォンだけでなくネット接続が可能なスマートテレビや電子書籍・ドローンなどの新しい産業にも利用されるようになったのです。
さらに、自動車の分野では多くの世界的企業がLinuxを用いたプロジェクトを支援していて、自律運転だけでなく自動車同士を連動させる研究も進んでいます。このように、Linuxは大企業のサーバーを運用するために使われたり、個人ユーザーの開発者をたくさん生み出しただけでなく、大企業が新たな技術を開発するために利用するようになりました。ある個人が、趣味で作ったOSを世界中の人々と共有しようと決めた事が、とてつもなく大きな契機となったのです。